かにみそなまこをつまむ。

40代男子の日常、昔の思い出などについて、現在休載中

歩き遍路の思い出

歩き遍路の思い出⑰ 心霊体験4

前回、前々回の記事で書いた体験以外にも、何回か、心霊体験として話す方が楽な、体験をした。全て高知県の後半あたりを歩いているときの体験だった。 一番不思議だったことがある。 高知から愛媛に入って、少し進んだくらいの場所に、清水大師というお堂が…

歩き遍路の思い出⑰ 心霊体験3

善根宿で心霊体験をした次の日のこと。 その日は山道を歩くことが多かった。夕方も、山の中を歩いていて、町には着けそうになかった。地図を見ると、近くに通夜堂があったので、使わせてもらおうと思った。山の中の夜はめちゃくちゃ寒い。テントで寝るのと、…

歩き遍路の思い出⑰ 心霊体験2

とある善根宿に泊まっていたときのこと。具体的な場所は言えないが、高知県の後半あたりの宿。 宿に入った瞬間、違和感を覚えた。何がどう変なのか、はっきりと分からないが、ちょっとした言動で全てが崩れてしまいそうな怖さが空間に満ちていた。 荷物をお…

歩き遍路の思い出⑰ 心霊体験1

昔お遍路を元にしたホラー映画があった。「死国」とかいう題名だったのではないだろうか。見たことはないのだが、お遍路にはそういったオカルトと結び付けられるようなイメージがあるのかもしれない。お遍路のもとにある真言宗は、儀式が神秘的だ。 私は幽霊…

歩き遍路の思い出⑯ 忘れられない思い出2

山本さんはいろいろ自分の話をしてくれた。 今考えると、1人暮らしで話相手に飢えていたのかもしれない。もちろん当時の私はそんな風には考えていなかった。普通に、面白いなと思って、ふんふんと話を聞いていた。 子どものころから喧嘩が強かったらしく、…

歩き遍路の思い出⑯ 忘れられない思い出1

前回の記事に書いたが、この「歩き遍路の思い出」は当時書いていた日記を元に書いている。18年前のことだから、すっかり忘れていて、日記を読んでようやく、あ、そういえばそうだったっけ、などと思い出すことが、たくさんある。 でも、読み返すまでもなく…

歩き遍路の思い出⑮ おいしい水を求めて2

その日も私は、山の麓あたりの川の水を、飲んでいた。カワセミも見かけたし、美しい川だったから、いけると思った。 石をつたって、川の中ほどに行き、しゃがんで、川の水を両手ですくった。のどが渇いていたので、何度も何度も飲んだ。ガブガブ飲んだ。ああ…

歩き遍路の思い出⑮ おいしい水を求めて1

私がお遍路をしていたのは、25歳のとき。現在42歳だから、もう15年以上前になる。15年以上前のことを、なぜ今書けるのかというと、実は当時日記を書いていたのだ。夜、テントの中で寝袋にくるまって、その日にあった出来事を書いていた。 ボロボロに…

歩き遍路の思い出⑭ カツオのたたき定食

海岸沿いをひたすら歩き続けて3日目、ようやく室戸岬にある寺に着いた。お札を納めたり、お経を読んだりしていると「そうだ、私はお遍路だったのだ」と思い出した。ここしばらくは冒険野郎の気分だった。 この日は24番から26番まで回ることができた。 …

歩き遍路の思い出⑬ お腹が痛い

海岸沿いの大通りをひたすら歩き続けていた。おおみそかに参拝した薬王寺から、次の24番の寺、最御崎寺まで、かなり長かった。最御崎寺は室戸岬にある。丸2日歩き続けても、着かない。町中に寺が集中してるときは、1日で5~6カ寺まわれることもあった…

歩き遍路の思い出⑫ サルの楽園

朝起きると、森さんはもういなかった。ゆっくり朝食を食べたあと、荷物をまとめた。杉田さんに言われたように、ポストに鍵を入れ、ロッジを後にした。 再び歩きはじめた。 1人になると、また日常が戻ってきた感じがした。旅という日常、1人という日常、ひ…

歩き遍路の思い出⑪ 海を渡る2

元日の朝早く、杉田さんが迎えにきてくれた。もう1人私と同じ年くらいの青年を連れてきていた。杉田さんの会社のスタッフかなと思ったら、お客さんだという。青年は山田(仮名)と名乗った。杉田さんのツアーに何度も参加しているらしい。今日はタダでカヤ…

歩き遍路の思い出⑪ 海を渡る1

おおみそかの夜、廃バスの中で私は幸せなひとときを過ごしていた。 お接待の料理をたらふく食べつくしたあと、森さんといっしょにコタツに入って、小さなテレビで紅白歌合戦の続きを見ていた。 満腹だったし、だんだん眠たくなってくる。もうそろそろ寝袋敷…

歩き遍路の思い出⑩ おおみそかの夜

歩きはじめて七日経ったころ。 八十八の寺のうち、もう二十三番目の寺まで回っていた。海の近くを歩くことが増えてきて、もうすぐ高知県に入りそうだった。 この日参拝した二十三番目のお寺、薬王寺は人であふれかえっていた。えらく人気のある寺だなあ、と…

歩き遍路の思い出⑨ 森さん

冬に歩き遍路をする人は少ないそうだ。春、秋が多いらしい。もっともだと思う。夏は暑く、冬は寒い。 春、秋にどれくらいの人がお遍路をするのか分からないから何とも言えないが、たしかに、自分以外のお遍路さんとそんなに出会わなかった。でも、全く、では…

歩き遍路の思い出⑧ 足が痛い

遍路3日目、はじめて山を登った。12番目のお寺、焼山寺は山の上にあったのだ。道楽を極めた元ニートが、重い荷物を背負って山を登る。が、意外としんどくなかった。焼山寺はたいへんだぞ、とすれちがう人々に散々聞かされていて、気合が入りまくっていた…

歩き遍路の思い出⑦ 善根宿

歩き遍路をはじめて二日目の夕方、寝る場所を探して、だだっぴろい公園をさまよっていたら、同じ年くらいの青年に声をかけられた。髪の毛がぼさぼさで、髭も生えほうだい。服も汚なかったから、同じ歩き遍路だと分かった。 「寝るところ探してんねやったら、…

歩き遍路の思い出⑥ はじめての野宿

1日目の夕方、そろそろテントを張らなければならないな、と思いつつ歩いていた。お遍路で、はじめての野宿。場所探しに、なかなか手こずった。 人が通る場所や、ましてや車が通る場所にはテントを張りたくなかった。目立つのが嫌だ。かといって、全く人気の…

歩き遍路の思い出⑤ お経を読む

お遍路グッズを買って、歩き始めた。1日目は、ほとんど平坦な町中の道を歩いていたような気がする。歩き始めたばかりだったので、全然しんどくなかった。1日で、5番目か6番目のお寺まで、回れたんじゃなかっただろうか。 各寺に着くと、参拝する。実のと…

歩き遍路の思い出④ 遍路用品を買う

はじまりの寺には、電車に乗っていったような記憶がある。霊山寺という名前のお寺だったはず。 着くと、お寺の中に通してくれて、これからお遍路をはじめる人に向けて、住職さんがいろいろと話をしてくれた。何を話してくれたのか、全然覚えていない。が、話…

歩き遍路の思い出③ 荷物を背負う

遍路のスタート地点、徳島県にはフェリーで渡った。12月25日に上陸。なぜ仏教修行の開始日に、イエスキリストの誕生日を選んだのか、私にも全く分からない。たまたま決意して、準備して、到着したのがクリスマスだった。 フェリーを降りて歩き始めた。 …

歩き遍路の思い出② キャンプ道具を揃える

歩き遍路に出ようと決意した私は、アウトドア用品店に行き、旅の道具をそろえることにした。一人旅なんてしたことがないため、一から道具をそろえなければならない。当時25才、ニートであったが、20万円ほど所持金があった。10万円くらいは使うつもり…

歩き遍路の思い出① きっかけ

今から20年近く前、25才くらいの頃、四国でお遍路をしたことがある。野宿しながら、四国にある八十八のお寺を歩いて回った。 ずっと、なぜあのとき自分が遍路に出たのか、はっきりと分からないでいた。すごく重くて複雑な理由がある気がして、言葉にでき…