歩き遍路の思い出⑰ 心霊体験1
昔お遍路を元にしたホラー映画があった。「死国」とかいう題名だったのではないだろうか。見たことはないのだが、お遍路にはそういったオカルトと結び付けられるようなイメージがあるのかもしれない。お遍路のもとにある真言宗は、儀式が神秘的だ。
私は幽霊にまつわる怖い話を信じない人である。40過ぎて信じる人はほとんどいないと思う。いっぽうで、神様は信じてる。神道の神様といった意味ではなく、人間に計り知れない大きな流れというものを信じてる。特に、幸運な良い流れを。
怖い話は、話としてうまく出来過ぎている。相手を怖がらせようという意図がはっきり感じられる。怖くない話は膾炙しないし、私の耳にまで届くような怖い話というのは、だいたい完成してる。ああ、怖いと思った地点で「お話」なのだと気づいてしまう。
ただ、話ではなく、体験そのものは、場合によっては信じる。実際にそういう不思議な体験をしたのかもしれない、と思う。それを幽霊と結び付けて恐ろしく語る、怖い話を信じない。
幽霊については、いるかどうかは分からない。どうでもいいことだと思っている。
でも、そういう風に、幽霊を使って説明する方が楽なときだってあるな、とは思う。例えば、金縛りにあって、女の人の幻影を見たら、もう、幽霊を見たと語った方が楽だ。本人からしてみれば、その体験が幻影か幽霊かなんて分からないのだから。
お遍路中に、そういう体験を何度かした。もちろん人の死後の魂の仕業かどうかは分からない。が、説明するのが難しい。だから、いわゆる心霊体験として語ってみたい。(つづく)