かにみそなまこをつまむ。

40代男子の日常、昔の思い出などについて、現在休載中

出会いの春

 休みの日、娘たちを連れて、車で20分ほどのところにある、大きな公園に遊びに行ってきた。今回、妻はお留守番。三人で出かけた。

 ひと通りの遊具で遊んだあと、レジャーシートを敷いて、持ってきたおにぎりを食べた。桜が満開だった。桜はそんなに好きではないが、私たちの幸せな時間のすみっこに、その存在を陣取るくらいだったら許してやろう。

 食後、キャスターボードを持ってきたので、長女と次女が練習してるのを見てた。キャスターボードというのは、子供用のスケボーで、真ん中が細くなっていて、八の字のような形の板にタイヤがついている。子供たちの間で流行っているらしい。

 すると、少しして、我が家のものと全く同じキャスターボードを持った、長女と同じ年くらいの二人組がやってきて、同じ場所で練習をはじめようとした。あとあと知ったところによると、二人組は双子らしい。顔はあまり似てなかったが。

「あれ、同じやつちゃう?」

「ほんまや。同じや。」

 きゃっきゃ、言いながら、長女と次女の練習する後を追いかけるように、滑りはじめた。

 おお、なんか友情が生まれそうだな・・・と思いつつ眺めていたが、それぞれ、双子同士で、姉妹同士で、しゃべり合うだけで、けっきょく何も起こらなかった。

 でも、我が家の姉妹が、キャスターボードをやめて、遊具の方へ行こうとしたら、双子も練習をやめて、遊具の方へ歩きはじめた。面白そうだなと思って、双子の後ろを追った。

「なあ、どうする?」

「ミキ姉、声かけてよ。」

「リナが声かけなよ。」

「ええ、あたし無理。恥ずかしい。」

「じゃあ、あたし行くわ。」

 なんなんだ、この会話・・・。まるで思春期女子が男子に告白する前ではないか。もちろん、盗み聞きしようと、耳をとがらせていたわけではない。子供のこそこそ相談し合う声は、普通にしていても十分聞き取れるくらい大きいのだ。

 ワクワクしながら、次の展開を待っていたら、双子うちの一人が走りだして、前を行く長女に、ついに声をかけた。

「なあ、うちらと、いっしょに遊ばへん?」

 いったあああああー!!!!!!

 長女がコクリとうなずく。

 きゃあああああー、カップル成立!!!!!!

 

 それから遊具のあたりで、四人で遊びはじめた。私は暇になって、ベンチに腰掛けて、彼女たちの姿を遠くからのんびり眺めていた。実に楽しそうだった。

 

 特に長女の方が、よっぽど楽しかったらしい。帰りの車の中も、興奮冷めやらないといった様子だった。鬼ごっこをしていたようだが、双子は長女の一つ上の学年だったらしく、「四年生二人は、さすがの私でも捕まえられへんかったわー。」と遠い目をして語る。家に帰ってからも、妻に「新しい友達できてんでー。」とうれしそうに語っていた。

 長女がうれしそうで、私もうれしかった。でも、長女のいう友達は、遠くの公園で会った子らで、校区も全然違うし、この先、ほとんど会うことはない子らだ。あのね、あのねと妻に話しかける長女を見ていると、ちょっと悲しくなる。

 また、あの公園に行けば、会えるんだろうか。

 また、あの公園に連れていってあげよう。

 

↓これ(全く同じやつ)