かにみそなまこをつまむ。

40代男子の日常、昔の思い出などについて、現在休載中

妻の誕生日

 朝、妻のまゆげが太くて濃かった。目の上にのりを二枚貼り付けたかのようなメイク。正気なのか、失敗に気づいていないだけなのか、相変わらず意味が分からない。笑うまいと思っていたが、思わず笑ってしまって、笑いながら妻に「ちょっと鏡見たら?」などと失礼なことを言っていると、長女が妻の服のすそを引っぱって「今日ママの誕生日だね。」とにっこり笑って見せた。

 しまった。すっかり忘れてた。忘れてた上にメイクをからかってしまった。いや、でも誰が見てもあのメイクはおかしい。お笑い芸人ではないか。

 高校生のころや大学生のころ、妻と付き合っていたときは、プレゼントするのが手放しで楽しかった。離れて住んでるからサプライズのやりがいがあったし、プレゼントのその後を気にしなくてもよかった。

 いっしょに住んでると、なかなかプレゼントが難しい。なんせ二人のお金からプレゼントを買うわけで、自動的にプレゼント代を妻にも半分負担してもらうことになるからだ。あまり高いものを買うこともできない。また、妻にプレゼントしたものは、その後、当たり前の話だが、妻だけでなく私も住んでいる家に残ることになる。たとえばバラを百本プレゼントするなら、その後百本のバラを飾ることや、飾ったバラを世話すること、枯れたバラを始末することまで考えねばならないのだ。もちろんプレゼントすると喜んでくれるが、妻は積極的にバラを飾ったり、世話したり、始末したりはしない性格の人である。

 近頃は、現実的で日用品かつ消耗品を選ぶようになっている。

 さて、今年はどうすべきか。

 物を買わずに、一日自由券みたいな感じのものを作って、子供の面倒を見るから、羽を伸ばしてきて、と言おうかなと考えた。が、これは拒否される確率がかなり高い。妻は子供といっしょにいたがる。実際、何度も似たようなことを試みてきた。

 さんざん悩んだが、例年どおり、現実的で日用品かつ消耗品をプレゼントすることにした。なんかおもしろくないなあーという気持ちでいっぱいだったが、どう考えても思考は詰んでいる。まあ、気持ちだけでも伝わったらいいかと割り切った。

 仕事の帰り、普段買わないような、ちょっと高めの、妻用の日用品をいっぱい買った。100均の紙バッグにつめたら、まあ、いい感じに仕上がった。

 家に帰って、玄関でさりげなく渡すと、ちゃんと喜んでくれた。昔と比べて、お金もかかっていないし、手も込んでいないのだが、同じように喜んでくれるのはありがたかった。

 

↓ 本当はこんなのを贈りたい。