かにみそなまこをつまむ。

40代男子の日常、昔の思い出などについて、現在休載中

私を好きな人

 私を好きな人が苦手だ。憧れてる人とかも。褒められるのが苦手なことと関係してるのかもしれない。

 嫌いではない。嫌いなわけがない。自分のことを好きでいてくれる人を嫌うわけがない。むしろ好きだ。うれしいし、ありがたいし。

 でも、どうしていいか分からずに、緊張してしまう。異性に限っての話ではなく、同性でも同じだ。

 今日、職場の後輩から、そんな感じで、好かれているなあと感じて、緊張してしまう場面があった。もちろん、わざと好意的に接してくれてるのかもしれないが、それは関係ない。強く好きを出されると、うれしくて、幻滅されたくなくなって、借りてきた猫のようになってしまうのだ。かといって、私だって、ぐいぐい強く押して、相手に借りてきた猫のような思いをさせていることはよくある。けっして、不快な気持ちではないけど、窮屈だ。

 職場の後輩と、いっしょにご飯を食べにいって、相手はすごくいっぱい話をしてくれたのだが、私は、いかに嫌われずにこの場をやりすごすかに終始してしまったのだ。私は話を拾うのがけっこう得意なので、しんどくはなかった。しんどくはなかったが、非常にもったいない気がした。

 こんなんでいいんか。

 帰りの車の自問自答した。相手にも申し訳ないし、友達ができるチャンスだったかもしれないじゃないか。40のおっさんが友達とかいうのもどうかという気がするが。

 しかし、どうしたらよかったもんか、分からない。40年間ずっと分からない。が、さすが、年をとっただけあって、ひらめいた。

 こっちからも、相手と同じようにがんばって、話題をいっぱい出したらよかったんじゃないか。

 普通は中学生でも分かってそうな問題の道が、ようやく拓けた気がした。

 私はこれまでずっと、相手の好意にあぐらをかいて、楽していただけなのではないか。幻滅されることを恐れずに、普通にこっちからもボールをいっぱい投げたらいいだけじゃないか。

 こうして私はまた一つ、大人の階段を上ったのです。