ドラえもんの映画
娘二人にせがまれて、日曜日にドラえもんの映画を見に行った。空のユートピアとかいう題名の映画。映画館で映画を見るのが久しぶりだったこともあって、十分楽しめた。ドラえもんはショートショート的なアニメだけど、映画のドラえもんはきちんとテーマがあり、心に響く。
40代のライフスタイルという題名なので、アニメ映画のあらすじを言ったところで、怒られることはないと思うが、一応、軽くネタバレすると予告しておきます。
今回のび太たちは、完璧な人々ばかりが住む空の理想郷に訪れる。ダメなのび太は、かねてから完璧になりたいと思っていたのだ。が、実際、理想郷は理想郷じゃなかった。人々が完璧なのは、理想郷を作った一人の悪人が、洗脳する機械を使って、人々を操ろうとしていたからだった。そんなことも知らずに、のび太たちは完璧を目指して、理想郷で生活しはじめる。
途中、ジャイアンとスネ夫がどんどん変わっていくシーンがあって、これがかなり面白かった。乱暴なはずのジャイアンが「のび太君、大丈夫ですか。」などと言う。嫌味でいじわるなスネ夫も変わっていく。はればれした聖人のような表情のジャイアンとスネ夫。のび太をいじめたりなんかしない。のび太に自分のご飯を分けてくれたりする。
「だめなところもあるけど、それが僕なんだ」とか、正確に合ってるか分からないが、そんな感じの、良いセリフがいっぱいあって、クライマックスでジャイアンの洗脳がとけて、いつも通りの悪そうな顔に戻る場面では、かなりジーンとした。
たしかに完璧という言葉は、誰かの、何かの基準の上にあるんだよなあ、とか気づかされて、自分も他人に自分にとっての完璧を求めているときがあるなと反省した。コロナ禍で管理社会に拍車がかかって、社会は人々により完璧を求めだしている。
この時によくぞこんなテーマの映画を作ってくれたなと思い、製作スタッフ一同に大きな拍手を送る気持ちでエンドロールを眺めていた。ら、前の席の家族の子供が「あーつまらんかったー。長かったー。」と感想をもらした。
ち、人が感動の余韻に浸っているというのに、とっさにイラっとしたとき、はっと気づいた。まさに、今、私は、相手に完璧を求めた――。
かにみそなまこのバカヤロウ!
その子にとってはつまらなかったのだ。私は面白かった。その子は面白くなかった。それでええじゃないか。本当にそれでいいのだ。
たしかに娘たちも途中、何度もあくびしていた気がする。子供にとっては面白くない映画だったのかなと思って、あとで、娘たちに感想を聞いてみたら、ジャイアンとスネ夫が良い人になっていくシーンが怖すぎた、とのこと。ああ、なるほど、そういうことか、たしかに、あれは怖いだろうな、と思った。