かにみそなまこをつまむ。

40代男子の日常、昔の思い出などについて、現在休載中

理由があります

 猛烈に長女に怒ってしまうときがある。

 だいたい同じパターンで、小2の長女の怒りが原因だ。普段は温厚な長女だが、一度スイッチが入ると、ずっと怒り続ける。癇癪持ちだ。同居する私にとって、たまらなく不愉快である。ぶつぶつ言い続け、壁や床をドンドンと蹴り、近寄って注意しようとすると、私の足も蹴ってくる。

 で、その場合、だいたい私は、怒りのデメリットを冷静に説く。どうすれば怒りを忘れられるかアドバイスする。

 が、全然うまくいかない。

 うまくいった試しがない。そのうち、こっちも腹が立ってきて、いい加減にしろと怒鳴る。長女もキレて、訳が分からんくらい泣き叫ぶ。ジ・エンド。

 今朝もこのパターンだった。

 長女へ説得を試みてるときから、嫌な予感がしてたものの、大惨事になる前に、なんとか立ち直ってもらいたかったのだ。

 やはり無駄だった。

 いつまでも怒り続ける長女が、箸の先をかんで折ったのをきっかけに私はキレた。彼女の癇癪は私譲りにちがいない。

 長女の折れた箸を思いきり投げつけて叫んだ。

「いい加減にしろ、コノヤロー。」

 42才と8才の修羅場がしばらく続いたのちに、妻登場。

 一心不乱に泣き続ける長女を抱きしめる。

「なんで、怒ってるの?」

「〇〇ちゃん(妹の名前)が、〇〇したから。〇〇して〇〇だったの。」

 みるみるおさまっていく長女。

 私の苦労はいったい何だったんだろうか。

 しかし、こうして、私はまた一つ子育てスキルを手に入れたのである。

 ――子供が怒ってるときは、なだめるのではなく、理由を聞いてあげること。

 仕事から帰って来たのち、私は妻に誇らしげに語った。

「たしかに、今朝はみっともない修羅場を見せてしまった。しかし、そこからすばらしい教訓を得たんだ。子供が怒ってるときは、理由を聞いてあげるべきだってね。」

 妻は鼻で笑って言いました。

「おまえ、今ごろ何言ってんねん。くそが。」