かにみそなまこをつまむ。

40代男子の日常、昔の思い出などについて、現在休載中

ヌートリア

 夕方、ちょっと休憩しようと思って、会社の外に行き加熱式タバコを吸っていた。

 家も田舎だが、職場も田舎。会社の前には竹藪があって、その前に大きめの用水路が流れている。

 最近、仕事忙しいなーなんて、ぼんやりしていたら、ばしゃんと大きな水の音がした。けっこう、でかい音だった。鯉くらいの大きさを想像した。でも、こんな用水路に鯉なんているわけがない。おそるおそるのぞきこんだ。

 哺乳類のシルエットが水の中をすごいスピードで過ぎて行った。

 かわうそ・・・?いや、絶滅したはず。

 草陰で止まって休憩しているところへ近寄った。ネズミのようなしっぽ。カピバラのような顔をしてる。ドブネズミにしては巨大すぎる。そうだ、この生き物は、たしかヌートリアだ。

 数年前、テレビのニュースで、京都の川でヌートリアが繁殖していると流れていた。ついに、ここまで進出してきたのだ。こんな田舎にまでやってきたということは、もう日本のいたるところで繁殖しているということだろう。ザリガニやブラックバスや、ミシシッピアカミミガメのように、そのうち近くで見られるのが普通の生き物になっていくに違いない。

 外来種がのさばることについて、いろいろ問題はあるのだろうが、そこまで関心がなく、ただ単純に、人間以外の生き物の気配がする日常の風景が嬉しい。ヌートリアは、私から離れたところで岸に上がり、鼻をひくひく動かしていた。

 人工的に作られた用水路の一角が、一瞬アマゾンの奥地のように目に映る。鬱蒼と茂った雑草も、ヌートリアの背景となれば趣深い。ヌートリアの住むアマゾンから、生きていく力強さのようなものを受け取った。

 仕事は相変わらず忙しいが、戻ってがんばるぞーという気になった。