野鳥の声がする時計

　数年前、家の時計の調子が悪くなったので、時計を買い替えた。

　時間に追い立てられたくないから、優しく時間を教えてくれるものがいいなと思った。音が鳴るやつがいいけど、うるさいのは嫌だ。いろいろ考えながら、アマゾンで商品を探してたら、野鳥の声がする時計に行き当たった。日本野鳥の会監修で、時間ごとに、いろんな野鳥が鳴く。まあまあ高かったが、鳥の鳴き声を覚えられそうで、子供の教育にもいいな、と思った。ポチっとクリックして購入した。

　以来、野鳥の声がする時計とともに生活しているが、なかなか素敵だ。

　朝に聞く鳥のさえずりは気持ちがいい。もっとも、私が住んでいるところは、そもそも田舎なので、時計がなくても、朝どこかで鳥はさえずる。でも、この時計を取り付けてから、家の周辺で、さらによく鳥がさえずるようになった。時計の録音された野鳥の声に呼応してるんじゃないだろうか。

　夜の時間帯は、夜に鳴くような鳥が録音されている。ゴロスケ、ホーホーとか、フクロウが鳴く。時間帯だけでなく季節ごとにも、鳥の種類が変わる。春なら春によく鳴く鳥。夏なら夏によく鳴く鳥。電波時計だから、季節もきちんと分かってるのだ。えらい、えらい。

　ただ、いっこうに鳥の名前を覚えられない。何時にどの鳥が鳴くか決まっていないからだ。一応、説明書みたいなのはついているが、この季節には、こいつらの中のどれかが鳴きますよ、と書かれているだけである。鳥の絵に、ツーツーピーピーと鳴く、などといったオノマトペによる説明も添えられているが、どの声がツーツーピーピーなのか、いくら耳を澄ましても、いっこうに分からない。

　誰が、ツーツーピーピーで分かるのか。コッカドルルルルルーが鶏の鳴き声だと分かるのは、そのように表記することを知ってる人だけだ。さらに説明書によると、シークレット一種の鳴き声も付いてるそうだ。もちろん私にとっては、現状ほぼ全ての鳴き声がシークレットである。さすがにウグイスやフクロウは分かるが。

　とまあ、素敵な時計なのだが、かなり玄人向けの仕様でもあった。

　話は変わるが、この間、家族でキャンプに行った。二日目の朝、みんなで朝ごはんを食べていたとき、山の方からカッコウの声が聞こえてきた。（もちろんカッコウの声も分かる）すると、小さなキャンプ椅子に座って、食パンを頬張っていた次女が、キョロキョロ周りを見渡して、「もう、７時かー。」と言った。

　私も妻も、長女も、同時にふき出した。本物の鳥の声を、時計と間違えているのがおかしかった。

けっこう頑丈。