雨の散歩
日曜日、みんなで公園にでも行こうと話をしていたのだが、ずっと小雨が降ってて、出かけれなかった。妻も子供も私も、部屋の中でそれぞれのことをしていた。途中、私と子供はスーパーに買い物に行ったが、妻はずっと読書やら資格の勉強やらで、机の前にへばりついていた。
16:00くらいになって、妻が突然立ち上がった。
「もう我慢できひん。散歩行きたい。」
「でも、雨やで。」
言ってみたが、それでも行きたいとのこと。それなら、みんなでカッパでも着て散歩に行こうか、ということになった。
雨の散歩。
何気ない日常の風景に思えるが、意外と非日常だなと思った。何の目的もなく、雨の中散歩するのが、こんなに素敵なことだなんて思わなかった。
ほとんど大人の日常において雨は不必要だ。仕事に雨はいらない。雨が降ると手間が増えるだけ。傘をささなきゃならないし、雨に濡れると不愉快だ。でも、世界に雨は必要だ。なんか詩みたいだけど、雨が降らなきゃ、食物は育たないし、川は干からびて、森は砂漠になってしまう。
雨の中、みんなで歩いていると、土の匂いがした。田舎の町で、山が近くにあるから森の中にいる気分だった。立春も過ぎて、今は雨水だろうか。もう春なのだなあと思った。雨で近くの川が暴れてないかと、怖いもの見たさで、ワクワクしながら行ってみたら、意外と普通に流れていた。
子供らは水たまりを見つけると、ラッキーという感じで思いきりふみつける。長くつをはいているからこそ為せる業なのだが、大人は絶対にしない。濡れたくないから。たまにこっちにもかかるので、やめてくれと思いつつ、雨を楽しんでいる姿には共感できた。
山の辺りにもやがたちこめていて、しとしと降る雨の中で、すごく神秘的な雰囲気だなあと思った。雨の中、歩いて仕事に出かけるとき、こんな風に山を見上げたり、土の匂いに気づいたりしない。ただ、足元を見て、濡れないことばかり考えてる。
結局一時間近く、みんなで雨の散歩を楽しんだ。こんな非日常がすぐそばにあるなんて気づかなかった。すごく気持ちのいい一時間だった。
晴耕雨読を心掛けてたけど、雨の日の散歩は癖になりそうだ。